●Wlderness Medicine
Wilderness Medicineの創設者であるAuerbach先生には、WMS(アウトドアスポーツ医学)野外活動での救急医学の歴史と最新の話題の解説、そしてスタンフォード大学附属病院救急部の医師として派遣されたハイチ大地震での救援活動のお話をして頂きました。ハイチ大地震のお話では、たくさんのスライドを見せて頂き、臨場感あふれる体験談を聞くことができました。旅行医学の一分野としての災害地での救援活動に役立つ貴重な講演でした。
災害地での救援活動の講演ということもあり、会場からは数多くの質問がありました。ご参考までにいくつかご紹介します。
<Q&A>
Q.被災地での透析患者の対応はどのようにしたのですか?
A.到着当初は全く手が付けられない状態で、しかもハイチには透析施設が少ないため透析患者への対応は機能していませんでした。2日後“国境なき医師団”が到着し治療の準備をしましたが、それでも対応しきれませんでした。“国境なき医師団”と自分のチームで協力をして治療に当たりたかったのですが、とにかく目の前の被災者を一人でも多く助けることで精一杯でした。
Q.ハイチのドクターは活動できたのですか?
A.ハイチの医療制度に問題があり何ヶ月も給料が支払われていなかったため医療従事者は被災地には戻らず、ローカルのドクター、ナースの姿はありませんでした。
地震の被害のない地域の病院は機能していました。
Q.この災害で子供たちが受けたショックは計り知れないものがありますが、心的外傷(トラウマ)の対応はどうしていますか?
A.子供だけではなく大人の受けた心的外傷も深いものがあり大きな問題です。
心のケアの専門家は首都に3人しかいません。
●ランチョンセミナー『低体温症のメカニズム-トムラウシの事故から学ぶ-』
ちょうど1年前の第3回登山医学セミナーのまさにその日に北海道のトムラウシで遭難事故が起こり、10名近くの尊い命が奪われました。この痛ましい事故は“人災”であるとも言われています。その死亡原因となった低体温症について学ぶことができました。登山者全員が低体温症についての知識を共有し、それぞれを観察し、その変化に気が付くことが大切であると講演者の篠塚先生は強く訴えていました。当然のことながら、登山者だけではなく、旅行会社やツアーガイドは絶対に知っておくべきです。
また、モンベル(株)の半田氏の講演は登山中の雨具についてでしたが、紹介された雨具は遭難事故(低体温症)にならないための必須アイテムです。
興味深い話では、低体温症になった登山者の荷物の中に登山用の雨具や防寒具が入っていることがあるそうです。それなのに、なぜ低体温症になるのか…それは、低体温症になるとまず脳に障害が起こるため、冷静な判断力が失われているからだそうです。防寒具を身につければ低体温症を防げたはずなのに、そんな簡単なことも分からなくなってしまうのです。登山では、“自分の身は自分で守る”のではなく、“仲間の身を仲間が守る“ということなのではないでしょうか。
今回の登山医学セミナーで学んだ知識を今後の登山、旅行医学、救援活動の現場で活かして頂ければ幸甚です。たくさんのご参加、誠にありがとうございました。
-当日の様子-